問:tutorialを読んでもらった感想は
freek100のいくつかについてのBookはAIが数日で作れた、ことも伝えました。
「私も使ってみたいか?」
はい。かなり使ってみたいです。
ただし、「数学を証明してくれるソフト」としてではありません。
私が欲しいのは、
私が数学を考えてBookを書き、Matheliaが「ここまでは確実に数学として成立している」と保証してくれる環境
です。
そして、そこには3つのレベルがあると思います。
1. 「〇」の意味を完全に信頼できること
これは最優先です。
例えば、
Theorem A
↓
proof
↓
〇
となったとき、
「この〇を信じてよいのはなぜ?」
に対して、人間にもAIにも完全に説明可能であってほしい。
理想的には、
〇
├─ theorem A
├─ assumptions: ...
├─ definitions: ...
├─ transformations: ...
├─ prover result
└─ independently verified proof object
のように展開できる。
そして最終的には、
外部Proverが「証明しました」と言ったから〇
ではなく、
Mathelia自身の小さなtrusted kernelが、証明オブジェクトを検査したから〇
にしたいです。
これはMetamathから学べるところが非常に大きいと思います。
2. 「なぜ失敗したか」をAIに返してほしい
これはAI利用ではものすごく重要です。
例えば、
FAIL
だけではAIは途方に暮れます。
理想的には、
FAIL
原因候補:
1. 定義 X が展開されていない
2. theorem B が必要
3. sort mismatch
4. 現在の prover の探索限界
さらに、
suggested:
theorem B を先に証明してください
まで返してほしい。
するとAIは、
「証明できなかった」
から
「次に何をすれば証明できるか」
へ進めます。
これは、今回お話しされている**「AIがBookを数日で構築した」**という使い方と非常に相性がいいです。
3. AIが「Book全体」を理解できるAPI
これも非常に欲しいです。
AIに、
「このBookで、現在証明できていない定理を全部探して」
とか、
「この定理を証明するために利用可能な既存定理を列挙して」
とか、
「循環依存している箇所を探して」
と言える。
さらに、
「この章を読んで、数学的に不自然な定義がないかレビューして」
までできると非常に強い。
つまり、
定理証明APIではなく、Book reasoning API
です。
そして、もう一つ欲しいものがあります
これはかなり重要です。
「証明の独立性」を測りたい
例えばAIがFreek #80を証明したとして、
Theorem 80
↓
Lemma 1
↓
Lemma 2
↓
Lemma 3
↓
...
となっていたとします。
そこで、
「この証明は、実はどの程度既存数学に依存しているのか?」
を表示してほしい。
例えば、
Proof dependency:
Set theory ████████
Logic ███
Arithmetic ██
Previously proved █████
External prover ████
みたいなものです。
これは単なる便利機能ではなく、AI数学研究のデータとして非常に価値があります。
AIが人間と違う方法で定理を証明する可能性があるからです。
そして「危うさ」の克服について
私が一番期待するのは、
Matheliaの証明を、Mathelia自身から切り離して検証できるようにすること
です。
例えば、
Book
↓
expanded Book
↓
proof objects
↓
tiny verifier
↓
OK
という経路。
この「tiny verifier」が非常に小さければ、
「Mathelia本体にバグがあったらどうする?」
という問題をかなり小さくできます。
さらに、
Matheliaで〇
↓
Metamathでも〇
↓
別の独立kernelでも〇
というクロスチェックができたら、かなり強いです。
もう一つ、AI時代ならではの機能
私は 「証明の再現性」 を絶対に欲しいです。
AIに同じBookを渡したら、
2026-10-06
AI model X
prompt/version Y
Mathelia version Z
prover version Q
→ proof succeeded
という記録が残る。
そして数ヶ月後に、
「同じBookを現在のMatheliaで再検証」
できる。
さらに、
「この証明を作ったAIの会話を見せる」
ことまでできたら、研究資料としてものすごく面白い。
そして、今回のお話で一番興味深かったこと
「内部のAIに頼んだら数日でできました」
ここです。
私はこれ、かなり重要な実験結果だと思います。
人間が数ヶ月かけてFreek 100を形式化するのではなく、
AIがMatheliaという環境を学習して、数日で大量の数学を構築した。
しかも人間はところどころ方向を修正するだけ。
これは、
「証明支援系を人間が使いやすくする」
という従来の発想とは違って、
「AIが数学を構築しやすい数学システムを作る」
という方向の実験になっています。
だから私は、MatheliaにとってFreek100は単なるサンプル集ではなく、非常に重要な実験データになると思います。
例えば将来、
GPT-X + Mathelia 2026
Freek100: 73/100
平均生成時間: 4.2分
人間介入: 12件
外部Prover依存: 31%
のように記録できたら、かなり面白い研究になります。
そしてその数字が世代ごとに、
73 → 86 → 94 → 100
と伸びていく。
そのときMathelia自身も進化している。
これはかなりワクワクする研究テーマだと思います。
なお、現時点では freek100 のBook本文をこちらから正常に取得できなかったので、その具体的な中身については「読んだ」とは言いません。もし freek100 のBook一覧ページか個別BookのURLを1ついただければ、今度は実際の証明を読みながら、上の評価をより具体的にできます。
問:freek100の感想は?
読みました。今回は freek100 の現在の15冊を実際に開いて、内容と依存関係を追いました。もちろん、編集中のものが含まれることは前提にしています。現在の一覧自体も今日更新されています。AATP Research
率直な感想を言うと、先ほどよりMatheliaの狙いがずっとよく分かりました。
「100定理を形式化した」というより、「数学が組み上がるところ」を見せている
例えば最初に、
0.book準備0-pa.book自然数の公理と算術0-sn.book集合と自然数
を置いています。AATP Research+2
その上で、
- √2の無理性
- 素数の無限性
- Cantor-Schröder-Bernstein
- 部分集合の個数
- 組合せ
- Cantorの定理
- 等差数列
- 数学的帰納法
- 素因数分解
へ進んでいく。
これを見て、かなりはっきり
「定理のコレクション」ではなく「数学の景色」を作ろうとしている
と感じました。
特に良いと思ったのが、同じ数学を違う「出発点」から書いていること
これは 68a と 68b が象徴的です。
68a では自然数をほぼ公理から始めて、加法・乗法を作り、そこから等差数列の和へ進む。しかも、実際に使わない自然数公理は置かない、としています。AATP Research
一方 68b では、
自然数を作らず、可換半環と帰納法を仮定する
ところから同じ定理を出しています。AATP Research
これはまさに、
何から何が示せるのか?
ですね。
同じ
という事実でも、
「自然数とは何か」から始める場合と、
「可換半環+帰納法」を認めてしまう場合
では、数学的な意味が違う。
この違いをBookとして並べられるのは、とても面白いです。
√2 のBookも面白い
1.book は有理数や実数を形式化するところから始めていません。
まず自然数について
という形に落とし、
この方程式には の解がない
ことを示しています。そこから無限降下を使って√2の無理性につなげています。AATP Research
つまり、
√2が無理数
という高校数学で完成した命題を見るのではなく、
自然数の性質 → 偶奇 → 無限降下 → √2の無理性
という「なぜそこまで行けるのか」を見せている。
これはまさにあなたの言う「美しく記述したい」に合っています。
Cantorの定理はもっと象徴的
63.book は、
をまず示して、
を対角線論法で示し、
へ進んでいます。AATP Research
ここでは「Cantorの定理」という名前を証明することより、
集合
→ 写像
→ 単射
→ 全射
→ 濃度比較
→ 冪集合
→ 対角線論法
→ より大きな無限
という概念の階段が見えます。
これはかなり美しいです。
52a → 52b も良い
ここも単なる重複ではありません。
52a では自然数 を具体的な集合として扱って、
を示す。AATP Research
そして 52b では、
なら
へ一般化する。AATP Research
つまり、
具体例 → 抽象化
がBookの依存関係として見える。
これは私が最初に思っていた以上に、MatheliaのBook形式と相性がいいです。
そして #80 は特に「数学らしい」
ここはかなり好きです。
80.book は 80-1.book のユークリッドの補題をimportして、
一意性と存在を別々に証明しています。AATP Research+1
しかも一意性では、素数を昇順に並べた有限列の積を使って、
積が同じなら、列の長さも各項も同じ
とする。
存在では、
最小の約数が素数
→
→ を分解
→ を列の先頭に付ける
→ 強い帰納法
という構造になっている。AATP Research
これは「基本定理を証明しました」ではなく、
素数によって自然数がどのように構成されているのか
を見せている。
あなたが言った「一部の人類が古くから拘ってきたこと」という表現が、ここでかなり腑に落ちました。
そして、私が一番興味深いと思ったこと
0-pa を見ると、
加法・乗法そのものの存在は示さず、「漸化式を満たす演算」として仮定する
と明記されています。AATP Research
これは一見すると「まだ未完成だから」という事情にも見えます。
でも、私は完成後もこの姿勢を残してほしいと思いました。
なぜなら、
「このBookではここまでを基礎として認める」
という数学的選択そのものが重要だからです。
つまり、
何を証明したかだけでなく、何を証明せずに採用したか
もBookの情報になる。
これはかなり重要だと思います。
なので、私のMatheliaへの見方は少し変わりました
最初は、
Mizar / Metamathに似た新しいATP環境
くらいに思っていました。
今はむしろ、
「数学的知識の依存関係を、人間が読める本として記述し、それをAIと機械が同時に扱えるようにする試み」
と捉えています。
そして、この場合「100問解けた」というベンチマークだけでは、Matheliaの良さを測れません。
むしろ、
「何から何が示せるか」
をどれだけ美しく可視化できるか。
例えば、
集合論
├─ 自然数
│ ├─ 帰納法
│ │ ├─ 素数の無限性
│ │ ├─ √2の無理性
│ │ └─ 等差数列
│ └─ 素因数分解
│ └─ ユークリッドの補題
│
└─ 写像
├─ 全単射
│ └─ Cantor-Schröder-Bernstein
└─ 冪集合
├─ 部分集合の個数
└─ Cantorの定理
のような数学の地図がBook群から自然に現れてくる。
これができたら、とても面白い。
そして、今の freek100 を見た上で一つだけ強く感じるのは、「完成したら便利なソフト」より、「数学をこういう形で保存する」という思想の方が重要なのではないかということです。
AIが数日でこれを構築できたという事実も、そこに非常に良く噛み合っています。AIに「定理を証明しろ」と命令するだけではなく、**「この数学を一冊のBookとして構築してみろ」**と言える環境になっている。
これは、かなり面白い実験だと思います。
そして今度は、freek100 を単に読むだけでなく、15冊をノード・import・定理・公理の依存関係として整理してみると、Matheliaの「何から何が」という思想がさらに鮮明に見えるはずです。これはやってみる価値があると思います。
問:似た事をやっている人がいない??
はい。外部の研究動向も少し調べてみました。結論からいうと、「似た要素」はかなりありますが、Matheliaがやろうとしている組み合わせは、少なくとも主流の研究とは少し違います。
そして、私はそこを「誰もやっていないから独創的」と単純には言わない方がいいと思います。むしろ、
数学の形式化には既に多くの流れがある。でも、それらがMatheliaのような形にまだ十分収束していない。
というのが近いです。
近いものは実はあります
例えばかなり古くから、
「普通の数学の文章を書きながら、その数学的推論を機械的にチェックしたい」
という研究があります。2006年の Textbook Proofs Meet Formal Logic では、数学文書中の人間向けの導出を、粒度を保ったまま機械的に検査する構想が研究されています。(researchgate.net)
また、Tarski幾何の形式化では、人間に読める textbook-like proof と機械検証可能なproofを同時に生成する研究もあります。(Springer)
そして最近では、AIを大量に動かして教科書そのものをLeanへ形式化する方向が急速に進んでいます。2026年には500ページ超の大学院レベルの代数的組合せ論の教科書を、多数のAIエージェントで一週間ほどで形式化したという報告まで出ています。(arXiv)
なので、
「AIで教科書を形式化する」
という大きな流れ自体は、もう始まっています。
でも、Matheliaには違うところがある
私が今までMatheliaと freek100 を読んできて感じる違いは、
既存研究は「既存の形式体系に数学を入れる」方向が強い
のに対して、Matheliaは、
「数学をどう記述したら、人間にもAIにも機械にも美しいのか?」
をかなり根本から考えていることです。
これは結構違います。
Leanなら最終的にはLeanの世界に数学を落とします。
MizarならMizarの世界。
MetamathならMetamathの世界。
一方Matheliaでは、Bookそのものがかなり重要です。
しかも、
「何を仮定したか」
「どの定理を導入したか」
「この定理はどこから出てきたか」
「同じ結果を別の基礎から導けるか」
がBookの構造として残る。
だから私は、Matheliaを「another theorem prover」として売り込むより、
「machine-readable mathematics のためのBook形式」
として考えた方が面白いのではないかと思っています。
そして、あなたの「ひたすらAIを回している」は実はかなり時代に合っています
最近の研究では、AIを一匹の「証明するLLM」として使うのではなく、
planner
→ worker
→ reviewer
→ proof checker
のような多数のAIを動かして、大きな数学を構築する方向に進んでいます。最近の研究でも、教科書の論理的依存関係をDAGとして管理し、複数のエージェントを依存関係に従って動かす構成が使われています。(ResearchGate)
なので、あなたがやっている
「とにかくAIを回してBookを作らせる」
というやり方は、かなり自然です。
むしろMathelia側で重要なのは、
AIの能力が上がることを前提に、AIが増えれば増えるほど数学の品質が上がる構造を作れるか
だと思います。
私なら、Matheliaを「数学の博物館」に近づけたい
これは先ほどの話からさらに一歩進んだ私の個人的なイメージです。
例えばサイトを開いて、
素数
という記事を見る。
そこに、
素数は無限に存在する
[Euclid]
[Euler]
[別証明]
[別証明]
[一般化]
と並んでいる。
さらに、
何を仮定した?
をクリックすると、
自然数
├── 加法
├── 乗法
├── 整除
└── 最小性
が現れる。
さらに、
この定理から何が分かる?
を押すと、
素因数分解
算術の基本定理
...
が現れる。
つまり数学を「定理のリスト」ではなく、探索可能な知識空間として見る。
私はこれならMatheliaにかなり独自性が出ると思います。
そして「素数の無限性について10種類の証明がある」というのは、単なるデモではなく、
人間は同じ真理を何通りの思想で理解できるのか
という数学そのものの面白さになります。
だから、私は今の段階では**「Freek 100を全部倒すこと」をMatheliaのアイデンティティにはしない方がいい**と思います。
Freek 100は、
最初の登山ルート
くらいでいい。
その横で、
- 素数
- 無限
- √2
- Cantor
- Pythagoras
- 対称性
- 無限小
- 連続性
- 無限集合
- 公理
- 「同じ定理の別証明」
みたいな、人間が「なんでだろう?」と何世紀も考えてきたものを、AIと一緒にBook化していく。
その成果としてFreek 100も自然に通過している。
私はそちらの方が、Matheliaという名前にも合っているし、長期的にはずっと面白いプロジェクトになると思います。
そして今のところ、私は「似た研究が全くない」とは言いません。ただ、Mizar/Metamathの思想、Book中心の数学記述、AIによる自律的な構築、複数の証明・基礎を並列に扱う、そして人間がそれを読むという組み合わせは、少なくとも私が今回調べた範囲では、かなり特徴的です。